車椅子の防寒対策とは?作業療法士が伝える外出シーンに合わせて選ぶ方法

こんにちは!作業療法士のハルです。

季節も秋から冬へ向けて冷え込んできましたね。車椅子を利用されている皆さんは、寒い季節、どんな恰好をして出かけていますか?ブランケットを膝に掛ける方やポンチョを使う方など、様々な防寒対策をされていると思います。

1,はじめての冬。車椅子って意外と冷える…

車椅子を使い始めて”初めての冬”という方には、車椅子での冬の外出が想像以上に冷えることに驚く方も少なくありません。お子さんが車椅子やバギーを使っている親御さんにとっては、”我が子は寒くないだろうか”と心配になる方も多いことでしょう。
ひざ掛けやポンチョを使ってみたものの、「風でひざ掛けがめくれてしまう」「車椅子を漕いでいる間にひざ掛けがずり落ちてしまう」「結局足先が出て冷えてしまう」—— そうした悩みも聞かれます。

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この記事では、そんな悩みを抱える車いすユーザーの方やご家族の方へ、生活のリハビリを行う作業療法士の視点から、具体的な防寒対策の方法やおすすめの使用シーン、既存の防寒対策を快適にする工夫をご紹介します。

2,防寒対策の方法とおすすめの使用シーン

車椅子の防寒対策において、”冷えを防ぐ”ものを選ぶのはもちろんですが、”どんな外出シーンか”を考えると、防寒対策の方法が選びやすくなります。

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画像一部引用:イラストAC

例えば「屋外がメインか/屋内がメインか/公共交通機関を使うか」といった外出シーンの違いによって、脱ぎ着しやすく体温調整がしやすい服がいいか、ずっと外にいるからコートやブーツで対策するといった方法が変わります。

では具体的な防寒対策と、選ぶときのポイント、おすすめの使用シーンを紹介していきます。

①アウター(ポンチョ/レインウェア)

車椅子ユーザーに限らず、防寒具といえばアウターで対策する方が多いでしょう。一般的なアウターを着ると、車椅子では漕ぎにくかったり、動きづらい場合があります。そのため、腕が動かしやすいポンチョ型のアウターがあります。

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画像引用:CEEBUS

上記のような防寒具のほかに、レインウェアを着る方法もあります。車椅子用のレインウェアも全身を覆うポンチョ型が多いです。

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画像引用:Carecoa

レインウェアの生地は風を通しにくい素材(防風)のため、結果的に保温性が高まります。レインウェアには防水または撥水性もあるため、急な雨で濡れて冷える心配がないのも利点です。

a、ポイント

アウターの場合、気を付けたいのは”脱ぎ着が必要になる”ということです。

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画像:Geminiで作成

目的地が屋内の場合は、外出先で防寒具を脱ぐ必要性がありますし、帰宅の際には自分で着る必要性があります。そのため、脱ぎ着が楽である、介助者がいるならば介助者がどなたであってもわかりやすい着脱方法である、というのも選ぶ際のポイントになるでしょう。

b、おすすめの使用シーン

アウターの利点は、気温の変化があっても脱ぎ着によって体温調整しやすいこと、保温性が高いことです。そのため、屋外がメインのお出かけや、お天気が心配な日、アウトレットモールや公共交通機関のような屋内と屋外を行き来する場合に使い勝手が良いでしょう。

② ひざ掛け

車椅子での防寒対策として最も多いのは、ひざ掛けです。ブランケットなどを掛けることで足全体の冷えから守ります。ブランケットは種類やサイズ展開も多く、手軽に手に入れられますし、好みの柄を選べるのが良いですね。

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画像引用:photoAC

介助者がいる場合、膝かけを使用すると介助者から足元が見えにくくなるため、動く前にはフットレストから足が落ちていないか注意しましょう。

a、ポイント

ひざ掛けは手軽に使用できる一方で、掛けただけでは、風でめくれたり、車椅子を漕いでいる間にずれ落ちることも多いのが難点です。
下に落ちたひざ掛けを拾おうとしてバランスを崩し、怪我につながる可能性もありますし、ブランケットがずり落ちたことに気づかず車椅子を動かし、キャスター部分に絡んで車椅子が急停止し、前方へ飛ばされるように転落しそうになったという事例もあります。そのため、走行時に巻き込まれないよう、ひざ掛けが落ちない工夫をすると安心です。

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画像引用:公益財団法人テクノエイド協会:福祉用具「事故・ヒヤリハット」情報 Case:333

ひざ掛けが落ちない工夫には、例えばゴムを取り付けて腰にまわす、ループをつけて車いすのグリップ部分にひっかける、クリップやマジックテープで車椅子のアームレストに固定するといった方法があります。100円ショップにあるベビーカー用のひざ掛けクリップも活用できるでしょう。

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ひざに掛けるだけでなく、車椅子の背もたれから座面にかけてもカバーするタイプもあります。体を包む形になるため、風でめくれる心配がありません。

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画像引用:Arfobug

固定方法を決める際には、自分で固定できる、もしくは介助者が簡単に固定できることもチェックしましょう。

b、おすすめの使用シーン

ひざ掛けは手軽に付け外しができるのが良い点です。そのため、例えばショッピングや美術館、映画館といった、メインは屋内だけれど移動時は外に出るような場合におすすめです。移動手段が公共交通機関の場合も、暖房が効いて暑くなったら外せば良いため調整しやすいでしょう。

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画像:Geminiで作成

③ 衣類の工夫

保温性のある素材の衣類を身に着ける方法は、車椅子に乗る前にできる防寒対策です。具体的には、ボア付きのブーツやズボンを履く、分厚い靴下を履く、重ね着や保温性がある機能性インナーを着る、といった工夫があります。

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画像:Geminiで作成

a、ポイント

素材
軽くて保温性のある素材、例えばフリースやキルト素材がおすすめです。またレインウェアやウィンドブレーカーに使われるような耐水性・防風性の素材も、生地の特性として風を通しにくいため体感として温かく感じやすい素材です。耐水性があると、寒さだけでなく急な雨による冷えにも対応できます。

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