こんにちは!ケアウィル編集部です。
三角巾って「どう付けるんだったかな?」と迷っていませんか。腕を安定させたいときや、ズレない巻き方を確認したいとき、重要なのは「基本」です。
この記事では、腕を正しく固定するための三角巾の巻き方を紹介します。あわせてズレを防ぐコツや注意点、必要に応じて検討したい別の固定方法についても確認しましょう。
三角巾の付け方①腕を正しく固定する基本手順
まずは、腕を固定する基本の向き・当て方・結び方を3ステップで解説します。
①三角巾を広げて向きを整える
まず三角巾を広げます。三角形の頂点を肘側に向け、長い辺が胸の前にまっすぐ来るように置きます。
このとき左右の端が後で肩の後ろへ回せる位置にあることを確かめてください。

②腕を支えながら三角巾を腕にかける
三角巾に腕を乗せる前に、肘を90度前後曲げた姿勢をつくります。この角度にすると前腕の重さが安定し、三角巾を当てやすくなります。
肘を90度前後に曲げた状態で、三角巾を腕の下から通して、肘から手先までを下から支えるように当てます。

頂点が肘側に来ていることを確認しながら、前腕が布の中央におさまる位置へそっと乗せます。腕を強く持ち上げたり引き寄せたりせず、腕の重さを支えたまま、布の上に移すイメージです。

腕が布の上で安定したら、左右の端をそれぞれ肩のほうへ持ち上げます。腕の重さが布に乗っている状態なら、結んだあとに前腕がズレにくくなります。
③肩の後ろで結んで固定する
左右の端を肩へ持ち上げたら、結び目は首の後ろ(うなじ)で肩に近い位置にします。この位置だと結び目が首に直接当たらず、布の張力が左右に均等にかかるため腕が安定します。

結ぶ強さは、きつすぎず、ゆるすぎずが基本です。指が1本入る程度の結び目とし、指先が冷たい・しびれる・色が悪いと感じたら、結び目を少しゆるめます。結び目の高さは左右の肩のラインとそろえると、腕が上がりすぎたり下がりすぎたりせず、長時間でも疲れにくくなります。
結んだら、三角巾の余った布を前腕の下で軽く折り返して整えます。頂点を結んでしまってもよいでしょう。布の遊びがなくなることで、体を動かしたときのズレを防ぎます。指先が締め付けられて白くなったり、しびれてしまったりする場合は、いったん結び目をゆるめて調整してください。

この工程で三角巾がしっかり安定し、腕を無理なく支えられる状態になります。
三角巾の付け方②ズレないポイント
三角巾がズレてしまう原因を整理し、その理由ごとに安定させるための具体的なコツを説明します。結び方・腕の角度・布の扱いを見直すことで、長時間でも崩れにくい状態をつくれます。
ズレる原因と対処
三角巾がズレてしまう多くの原因は、布が滑る、結び目の位置、腕の角度、余った布の処理にあります。ズレてしまう時には、まずはこの4つを確認します。
・布が滑る
布が滑ると、前腕が前にずれて落ちやすくなります。三角巾が当たる肩の上にタオルを置くことで、ズレを防ぐことが可能です。
・結び目の位置
結び目は首の真後ろではなく、首の付け根よりも支える腕側の少し肩寄りにすると左右の張りが整い、結び目が下がりにくくなります。
・腕の角度
肘が下がると重さが前へ流れて布が緩むため、腕の角度も重要です。肘は90度くらいに曲げ、脇の前に寄せると安定しやすくなります。
・余った布の処理
長い辺に“たわみ”があるとそのままズレの原因になります。布を軽く整えて張りを出し、、三角巾の頂点(肘側の角)を外側へ1回折り返す、難しければ頂点を結ぶと揺れが減り、腕が布の中で動きにくくなり位置が安定します。
これらの小さな調整を重ねることで、三角巾は長時間でも崩れにくい状態になります。
長時間安定させる工夫
三角巾を長く安定させるには、姿勢と腕の位置が重要です。背中が丸まったり体が前に傾いたりすると、腕の重さが前方へ流れてズレやすくなります。背筋を軽く伸ばして胸を起こした姿勢を意識することで、布の張りが保ちやすくなります。
腕は、肘を体の前・やや内側に寄せた位置に保つと安定します。肘が体から離れるほど三角巾にかかる張力が弱まり、腕が前に落ちやすくなるため注意が必要です。

動作中のズレを防ぐために、余った布は折り返すもしくは結んで、腕が動かないように整えましょう。座るときは、膝やクッションの上に一時的に腕を乗せると首や肩への負担を軽減できます。
三角巾は結び目が首に集中しやすく、姿勢でズレやすいため、基本は一時的な固定として使います。それでも首や肩がつらくなってくる場合はあります。長時間の使用が必要な場面では、より安定した固定方法を検討しましょう。
三角巾の付け方③片麻痺の腕を支える場合
片麻痺のある腕を三角巾で支える際に注意したいポイントと、安全に固定するための考え方と手順を説明します。
片麻痺の腕を支えるときに注意したいポイント
片麻痺の場合は、見た目よりも安全性を優先します。腕が落ち着いて支えられ、肩に余計な力がかからない状態を目標にしましょう。
腕は引っ張らず前腕を支えたまま、三角巾を前腕の下に通して当てます。下から前腕を支えながら三角巾を当てることで、腕の重さを三角巾に預けられます。
肘の角度や腕の位置は、「この形が正解」と決めつける必要はありません。痛みが強かったり、腕がつっぱったりする場合は動かす角度を小さく最小限にします。大きく動かすと腕がこわばりやすいため、小さな動きで整えましょう。
介助する人が三角巾を装着する基本手順
介助する人が三角巾を装着するときは、麻痺している腕を引っ張らずに下から支えることが基本です。手先だけで支えようとせず、体の近くで腕の重さを受け止めると安定して動かせます。
介助するときは、先に前腕や肘の下を手で支えて腕が落ちない状態をつくります。その状態を保ったまま、三角巾を腕の下から通し、腕を下から支える位置(前腕部分)に当てます。腕を支えながら三角巾を通すのが難しい場合は、太ももの上に腕を軽く乗せた状態で先に三角巾を腕の下に通し、三角巾と腕を一緒に支えても構いません。

三角巾を当てたあとは、腕を支えたまま位置を整えます。腕を持ち上げたり引いたりせず、支えた状態で微調整しましょう。痛みや腕のつっぱりが出たらそこで止め、介助を増やすか固定具を替えます。
先に三角巾を首にかけてから調整しようとすると、腕を持ち上げたり動かしたりしなければなりません。そのような動きが増えるほど、肩に負担がかかりやすくなります。
介助中は、本人の表情や体のこわばり方にも目を向けます。言葉にしにくい不快感が、表情や力の入り方に表れることがあるためです。大きな動作は避け、最小限の動きで固定を終えることが、本人にとっても介助者にとっても負担を減らします。
本人ができる範囲で行う場合の工夫
一人で行う場合は、腕は空中で動かさず、机や膝の上に置いたまま進めます。椅子に座り、机や膝の上に腕を乗せ、まずは置いた状態をつくってください。支持面に預けることで、腕の重さが分散され、肩への負担を減らせます。
姿勢も安定させましょう。椅子に深く座り、足を床につけて体を安定させると、片手でも動かしやすくなります。肘の角度や腕の位置は、一般的な形にこだわる必要はありません。痛みが出ず、操作しやすい角度を優先してください。

途中で難しさを感じたら、無理に続けない判断が重要です。できるところまで行い、難しい部分は介助を頼むほうが安全です。腕が落ち着いて支えられ、肩に余計な力がかからない状態を目標にしましょう。
三角巾では難しいと感じたら?より安定した固定方法
三角巾は応急的な固定には役立ちますが、長時間の使用や動作を伴う場面では不安定さを感じることがあります。そうした場合に検討したい、より負担の少ない固定方法があります。
三角巾で対応しにくいケースとは?
三角巾は、長時間の使用や動作を伴う場面で使いにくさが出やすくなります。
とくに、数時間以上つけ続ける場合は注意が必要です。三角巾は首の後ろで結ぶ構造のため、腕の重さが首や肩に集中しやすく、時間がたつにつれて首や肩への負担が増えます。首や肩のこり、痛みを感じやすい人ではつらさが出やすくなります。
歩行や立ち座り、家事などの動作が多い場面でも、三角巾はズレやすくなります。布1枚で支える構造のため、姿勢が変わるたびに腕が前後に揺れやすく、位置を保ちにくくなるのです。
また、片麻痺や筋力低下がある場合は、自分で腕の位置を直しにくくなります。ズレに気づいても調整できず、そのまま使い続けてしまうことで肩や首への負担が強まることがあります。結び目の調整や再装着に両手が必要な点も、日常生活では不便になりがちです。
このように、長時間・動作が多い・自己調整が難しいといった条件が重なる場合は、三角巾だけで支え続けるのが難しくなります。無理に我慢せず、より安定した固定方法を検討することが大切です。

腕を安定させやすい専用の固定具とは?
三角巾で不安定さを感じる場合は、専用の固定具(アームスリング・アームホルダー)という選択肢があります。これらは腕を袋状に包む構造になっており、前腕から手首までを面で支えられるのが特徴です。布1枚で支える三角巾に比べ、腕の位置が保ちやすくなります。
専用の固定具は、肩ベルトで支えるタイプが多く、首だけに重さが集中しにくい設計です。たすき掛けや肩全体で支える構造により、荷重が分散され、長時間でも首や肩がつらくなりにくくなります。日常動作がある場面でも、安定感を保ちやすいでしょう。
親指フックや内袋が付いたタイプでは、腕の前後移動や回旋が抑えられ、位置が崩れにくくなります。片麻痺や筋力低下がある場合でも、同じ位置を再現しやすい点は大きな利点です。

ベルトやアジャスターで長さを調整できる製品も多く、ズレを感じたときに自分で直しやすくなっています。三角巾が応急用であるのに対し、専用の固定具は継続使用や生活場面を想定した道具と考えると分かりやすいでしょう。
アームスリングを選ぶときのポイント
アームスリングは、固定力・使用場面・操作性の3点で選ぶと失敗しにくくなります。
まず固定力です。骨折直後や安静が必要な時期は、装着中に腕がずれないしっかり支えるタイプが必要です。日常生活が中心なら、包み込むように支えるゆったりタイプがおすすめです。
次に使用場面を考えます。動作が多い場面では、ズレにくさと着脱のしやすさを重視してください。見た目への抵抗が少ないと、使い続けやすくなります。
操作性も重要です。片麻痺や筋力低下がある場合は、片手で着脱や長さ調整ができる構造を選びましょう。前側にアジャスターがあるタイプは、ズレたときの微調整がしやすく安心です。
ほかにも選ぶときのポイントとして、首の負担が気になる場合は、肩で支える幅が広い、ベルトが食い込みにくいタイプを選ぶと安心です。アームスリングの見た目や人目が気になる場合は、形状が違うタイプのものもあります。シャツ式は体に沿って固定しやすく、位置の再現性が高いのが特長です。ケープ式はゆったりと固定されるため、日常使いしやすいのが特徴です。
三角巾は「正しく使い、無理なら切り替える」が安心につながる
三角巾は、腕を一時的に支える応急的な固定方法として有効です。向き・当て方・結び方を押さえ、”下から支える”意識で使えば、ズレや痛みは起こりにくくなります。ズレる場合は、結び目の位置や腕の角度、姿勢を見直すことで改善できることもあります。
一方で、長時間の使用、動作が多い場面、片麻痺などで自己調整が難しい場合には、三角巾だけでは負担が大きくなりがちです。そのときは無理に使い続けず、腕を面で支え、荷重を分散できる専用の固定具(アームスリングなど)を検討する判断が大切です。
大事なのは、状況に合う方法を選ぶことです。腕が安定し、肩に余計な力がかからない状態を選ぶことが、結果的に安全と安心につながります。状況に合った方法を選び、無理のない固定を行ってください。
(監修:作業療法士 ハル)



